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【ノーベル医学・生理学賞】:3分でわかるオートファジー

こんにちは!Ph.塩です!

今回は「オートファジー」です。

 

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著作者:U.S. Army Materiel Command



東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏のノーベル医学・生理学賞受賞が決まり、日本中が沸き立っていますね。これは本当に素晴らしいことで東京工業大学はもともと権威のある大学で難関大学ですが,今後さらに受験者が増えるのではないでしょうか?

今回はそんな注目を浴びているノーベル賞やオートファジーについて書いていきます。

 

目次:

1.ノーベル賞ってどんなのが対象になっているの?

2.オートファジーってなに?

3.オートファジー研究が今後大活躍して薬も創られる?

 

1.ノーベル賞ってどんなのが対象になってるの?


これはずはり、2種類あると思います。

ひとつは今現在世界的に有名で多大な貢献を成し遂げているもの。
もうひとつは山中伸弥教授のIPS細胞研究のように今後の発展に大きく期待がもたれているものです。

今回発見されているオートファジーに関しても今後の発展が世界に大きな貢献をもたらすものだろうということでノーベル賞の受賞となったと考えられます。

東京工業大学で開かれた受賞者決定記者会見では大隅氏は「基礎研究を重要視してこそ応用の可能性が開ける」と何度も強調していました。


基礎研究というのはある日突然進歩するものでもなくいきなり躍進するものでもありません。また将来的に必ず芽が出るという確証もあるわけではないです。

そういったものにお金を投資するのはある意味「リスキー」だという見方もあるでしょう。


またそういった理系学問的なものにお金を払うかどうかを決めるのは大体が文系の方です。どうしても予算を裂くという話にならないのは想像が容易ですね。

そんな中基礎研究に重きを置いた大隅氏がノーベル賞を受賞したことはまさに針の穴に糸を通すような至難の業であり、非常に多くの困難を乗り越えてきたのだろうと思います。

 

2.オートファジーってなに?


一言で言うと細胞が自分の一部を分解して再利用するシステムの事を指します。

 


いまではすべての生物に共通した仕組みの一つだといわれていますが大隅氏の研究がなければここまでの理解が進んでいかなかったかもしれません。

大隅氏が扱っていたのは出芽酵母です。これは「たったひとつの細胞」から成っている細胞です。普段はその名の通り出芽によって増えていきます。
しかしこれは栄養状態が普通の状態であればという条件が付いています。

栄養状態が悪くなると胞子を作ってお休みし、最低限の生命維持機能のみを働かせて飢えをしのぎます。

 

この器用な「切り替え」について大隅氏はある考えに至りました。

「飢えた酵母というのは細胞内にある液胞のたんぱく質を分解してそれをリサイクルして生き延びているのではないか?」という発想です。


まるで飢えたアンパンマンが自分の顔を食べて生きているようですね。

しかし液胞という場所は細胞内のいらないものをため込む場所だということが知られています。ですから「リサイクル」という言葉をつかってひらめいたわけです。

この大隅氏の発想は大当たりであり、「不要な細胞の部品をある膜で取り囲んで分解してリサイクルする」というシステム、つまりオートファジーが発芽細胞には備わっていることが突き止められました。

タンパク質はアミノ酸からできているのですが、このタンパク質をアミノ酸まで分解して新たな部品の組み立てに利用するのです。しかもここがとてもおもしろいのですが、外から入ってきた外来の細菌など、自分の細胞由来かどうかにかかわらず不要な物を分解してしまうのです。

こんなすごいオートファジーの発見のみならず大隅氏は次のような研究に進んでいきます。

3.オートファジー研究が今後大活躍して薬も創られる?


遺伝子というのは体の設計図のようなもので、すべての体のしくみはこの設計図によって作成されています。


大隅氏は1990年代にオートファジーを制御する遺伝子群を特定しました。それ以降発芽細胞のような細胞だけではなくマウスのような動物細胞の研究も進んできました。

ちょうどその頃です。覚えているかたもいらっしゃるかもしれませんが、GFPという細胞内の特定のタンパク質を光らせる技術が世の中を騒がせていました。

そんなGFPの技術や遺伝子操作技術も進み大隅氏の研究も次のステージに進みます。

「不要な部品を含んでいるものの一部が膜で取り囲まれてオートファゴソームというヤツを作る。そのオートファゴソームがリソソームという分解酵素を持っているヤツと合体する」


ということが発見されました。これは非常に大きな役割で、実は人間の体にも必須であることもわかりました。

この大隅氏の発見をききつけ全国から研究者が集まり独立してオートファジーの研究は進められていきました。すべては大隅氏の発見から始まり、全国の研究者から続々と新事実が発見されていきました。


本来は排除されていく余計な異常物質が蓄積されて起こるアルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの神経性疾患にもオートファジーが関連しているという研究もされていて、近い将来には新しい作用機序の薬も発見されるかもしれません。


このオートファジーを元に様々な研究が現在進行形で行われていて、大隅氏の孫弟子たちが現在懸命に研究を続けています。


記者会見で「賞金は後進の研究支援に役立てたい」とおっしゃっていて、大隅氏のおかげで日本の基礎研究の未来はしっかりと明るく照らされているような気持ちになりますね。


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