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【ベンゾジアゼピン系抗不安薬まとめ】:抗不安薬の作用とその特徴は?

こんにちは!Ph.塩です!

 

今回は「ベンゾジアゼピン系抗不安薬まとめ」です。

 

ベンゾジアゼピン系の薬は睡眠薬として使える薬、抗不安薬として使える薬、その両方で使用できる薬という分類にも分けられます。


そのため今回の抗不安薬の記事においてもベンゾジアゼピン系睡眠薬の記事で登場した薬が再登場することがあります。

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抗不安薬の使用目的としてはもちろん不安を取り除くことが第一優先ですが、その他にも筋弛緩作用を期待して肩こりや肩こりからくる頭痛の沈静化を期待したり、抗痙攣効果を期待しててんかんや小児の熱性痙攣に使用する事もあります。

 

どの作用にどの薬が適しているのか、ということはこれまでの経験からある程度わかってきていますので、その症状を見ながらお薬を選択し、使用してみて個人的に合うか合わないかということを患者さんの聞き取りの中から決めていくのが通常の治療のスタイルになります。

 

今回はそれぞれの特徴を「無し」から「+++」といった表現で表してみました。「±」から「+++」に向かって強くなります。

 

目次:
0.この記事で使用する専門用語について
1.短時間作用型抗不安薬
2.中時間作用型抗不安薬
3.長時間作用型抗不安薬
4.超長時間作用型抗不安薬
5.抗不安薬を使用していい人、悪い人
6.まとめ>

 

 

0.この記事で使用する専門用語について

 

・半減期:

薬の体の中の濃度が飲んだときと比べて半分になる時間のこと。これが長ければ長いほど体の中に薬がとどまっていることを指していますので、どれだけ薬が長く効くのかという指標になります。

 

・処方日数制限:病院の先生が処方できる最大の日数のことです。乱用防止や横流し防止の意味と、この日数で効果を確認するべきという意味を込めてこの日数以上は処方してはいけませんと法律で決まっています。

 

・ジアゼパム換算:ジアゼパムという薬と比べてどれくらいの効果を持っているのかという指標です。単純にその薬の力を計ることができます。値が小さいほど強いと考えても良いでしょう。もちろん個人差はありますので、これが全てではありませんが参考にしてください。

 

・抗不安作用:

胸がもやもやする、頭に霞がかかった感じがする、何とも言えないが辛い気持ちになる、怖い、など様々な表現方法がありますが、漠然とした「不安」に対する効果のことです。不安の対象は何でもよいですし、対象が無くてもかまいません。不安だと感じたら理由はなく不安なのです。

 

・筋弛緩作用:

体の筋肉が弛緩して脱力感、ふらつき感などが起こる作用のことです。睡眠剤はこの作用がつきもので、その程度にもバラツキがありますし個人差があります。転んでしまわないように注意しましょう。

 

・抗痙攣作用:

痙攣というのは脳の電気信号の乱れによって筋繊維が過剰に、また無意識に運動してしまうことを指します。この電気信号の乱れを直したり、筋肉を落ち着けたりして痙攣を抑える効果のことを抗痙攣作用と呼んでいます。病態として熱性痙攣や、てんかん発作などがあります。

 

1.短時間作用型抗不安薬


デパス(一般名:エチゾラム)
・用量は0.5~3mg
・半減期は6時間
・処方日数制限は無し
・抗不安作用 +++
・催眠作用  +++
・筋弛緩作用 ++
・抗痙攣作用 無し
・ジアセパム換算 1.5
・不安な気持ちに対してとても多くの人に処方されている薬です。特徴としては他の記事も参考にして頂きたいですが、作用がかなり強いくせに処方日数制限が無く、海外からの購入も容易に行えてしまう薬です。しっかり管理して使用するならばとても良い薬ですので用法用量を守り、それでも効かない場合は医師、薬剤師に相談しましょう。

 

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リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
・用量は15~30mg
・半減期は5時間
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 +
・催眠作用  +
・筋弛緩作用 ±
・抗痙攣作用 ±
・ジアセパム換算 10
・印象として非常に優しいお薬です。抗不安作用や催眠作用はとても穏やかで、更に筋弛緩作用と抗けいれん作用もほとんどありません。ですからふらつきやめまいのような副作用はとてもおきにくい印象です。導入部分で使用したり、もしくは他の薬剤で副作用が強く出てしまう方にオススメできます。

 

2.中時間作用型抗不安薬


ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
・用量は0.5~3mg
・半減期は12時間
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 +++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 +
・抗痙攣作用 +++
・ジアセパム換算 2.5
・抗不安作用が強く、催眠効果、筋弛緩作用がその割に少ないために純粋な抗不安薬として使用できます。医療従事者の中でも比較的安全な薬という印象がありますね。また肝臓での代謝をうけにくいので肝機能が落ちている方にも使用しやすいお薬です。以前ベンゾジアゼピン系睡眠薬で紹介したソラナックスと同じで、これから気持ち悪くなるだろうという予測で吐き気を催してしまう「予測性嘔吐」に対して使用する事もあります。

 

レキソタン(一般名:ブロマゼパム)
・心身症の場合は3~6mg、神経症、うつには6~15mg
・半減期は20時間
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 +++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 +++
・抗痙攣作用 +++
・ジアセパム換算 2.5
・強力な抗不安効果、筋弛緩効果を持ち合わせるので、心身症や神経症、うつに対して使用される他に、肩こり、体のこわばりに対して使用する事もあります。その効果の割に催眠作用が少なめですのでそちらの副作用に関してやや心配が少なくて済むという特徴も持っています。

 

ソラナックス、コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
・用量は1.2~2.4mg
・半減期は14時間
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 ++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 ±
・抗痙攣作用 非常に少ない
・ジアセパム換算 0.8
・ベンゾジアゼピン系睡眠薬の記事でも出てきました。こちらは筋弛緩作用が少ない割に催眠作用や抗不安作用が強く、抗痙攣作用も少ないために脳への影響も少ないという比較的安全な薬です。ワイパックスと同様予測性嘔吐にも使用できます。不安などの症状に対する薬物治療においては割と初期に使用してみるお薬という印象があります。

 

3.長時間作用型抗不安薬


リボトリール(一般名:クロナゼパム)
・用量は0.5~6mg(徐々に効果と反応をみて用量調節)
・半減期は27時間
・処方日数制限は90日
・抗不安作用 +++
・催眠作用  +++
・筋弛緩作用 ++
・抗痙攣作用 +++
・ジアセパム換算 0.25
・てんかんの発作や精神運動発作、自律神経発作に使用できます。小児に対してもよく使用される薬剤であり、幼児期の発作的癇癪、小児けいれん発作などに粉薬として処方される事もあります。また大人の方でも何となく気分が優れない、突然汗が出てきたり、焦燥感に襲われる。頭がかっかとなってのぼせた感じになるといった自律神経の乱れに対しても使用する事があります。もちろん精神的な気分の落ち込みを紛らせたりする事も出来ますので非常に使用する幅が広いお薬と言えます。

 

セルシン、ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
・用量2~20mg(ただし外来患者は15mgまで)
・半減期は27~54時間
・処方日数制限は90日
・抗不安作用 ++
・催眠作用  +++
・筋弛緩作用 +++
・抗痙攣作用 +++
・ジアセパム換算 無し
このお薬から全てのベンゾジアゼピン系薬が始まったと言っても良いでしょう。非常に歴史のある薬であり、使える対象も神経症、うつ、心身症、脳脊髄疾患全般、麻酔前投薬、と非常に幅広いです。またアルコール中毒患者さんに対してアルコールの代わりにこのお薬を使用し、1週間くらいかけて徐々に減らしていく事で急に体からアルコールが抜けてしまい妄想、幻覚などの症状が起きてしまう事を防ぐと言った使い方もよくされています。また小児に対して熱性痙攣やてんかん発作に坐薬で使用する事もあります。熱性痙攣発作はこのままでは子供が死んでしまうのではないかと思うほど激しい発作が起きることがありますが、このお薬を使用することですぐに落ち着いて治ることもよくあります。

 

エリスパン(一般名:フルジアゼパム)
・用量は0.75mg/日
・半減期は23時間
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 ++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 ++
・抗痙攣作用 ほぼ無し
・ジアセパム換算 0.5
・おそらくやや過去の薬になってきているお薬です。あまり処方されているところを見たことがありませんし、効果としても平凡で使いどころが難しいでしょう。
平凡と言うことが悪いことではありませんが、狙い所が難しいので他の薬剤を使用した際にお薬が合わなかった場合のお助け役といった位置づけになってきています

 

メンドン(一般名:クロラゼプ)
・用量は9~30mg/日
・半減期は不明
・処方日数制限は14日
・抗不安作用 ++
・催眠作用  ±
・筋弛緩作用 無し
・抗痙攣作用 ++
・ジアセパム換算 7.5
・メンタルのドン、ということでメンドンです。本当にこのようにして名前がつけられました。処方日数が短くて病院に何度も足を運ばないといけませんが、このお薬が体に合うとファンになる方も多いようです。中にはSNRIやSSRIよりも使えるといった意見も受けたことがあります。

 

メレックス(一般名:メキサゾラム)
・用量は1.5~3mg/日
・半減期は60~150時間
・処方日数制限は無し
・抗不安作用 ++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 ±
・抗痙攣作用 なし
・ジアセパム換算 1.67
・特徴はなんといってもその長い作用時間です。150時間とも言われ、実に1週間近く薬が体に残ることがあります。このような長時間の薬は離脱作用などが少なく、お薬をやめる時に安全に止めることが出来るというのも特徴の一つです。筋弛緩作用が少なく抗不安作用、催眠作用が比較的強いために副作用面の心配がやや少なくて済むという特徴

を持っています。

 

4.超長時間作用型抗不安薬

レスタス(一般名:フルトプラゼパム)
・用量は2~4mg
・半減期は190時間
・処方日数制限は無し
・抗不安作用 +++
・催眠作用  ++
・筋弛緩作用 +
・抗痙攣作用 無し
・ジアセパム換算 1.67
・非常に長い作用時間で知られ、1週間をゆうに越しています。抗不安作用が強く、うつや不安症に対して使用されます。SSRIでは副作用が高頻度に出て症状も大きい、リフレックスなどでは肝臓や尿酸への負担もかかる、等の不安やうつに対して第一に選択する薬剤が使用できない場合に使用します。そのためか、一つ目が合わなかった等の経歴を持つ方に対しては救世主的な印象をもたれているようです。

 

メイラックス(一般名:ロフラゼプ)
・用量は1~2mg/日
・半減期は122
・処方日数制限は30日
・抗不安作用 ++
・催眠作用  +
・筋弛緩作用 +
・抗痙攣作用 ++
・ジアセパム換算 1.67
・安全性が高く、依存しにくく、効果がまろやかです。筋弛緩作用がややありますのでリラックスしたような、だるいような体の変化を感じる方も見えます。不安に対する効果はしっかりありますので、通常1mgから開始しますがこの量でも満足される方も少なくありません。

 

5.抗不安薬を使っていい人、悪い人


妊婦、授乳婦、小児についてベンゾジアゼピン系薬剤が使用できないことはベンゾジアゼピン系睡眠薬の記事で書きましたのでよろしければ参考にしてください。

 

抗不安薬に関しては「使用して良くない人」というくくりが難しいところもあります。


なぜなら不安だという気持ちはその人個人にしかわからないため、睡眠と違って客観的に評価しにくいからです。

 

ですが、そういった場合本人の気持ちを一番大事にすることが最優先ですので、不安な気持ちが抜けない限りは自分に合う薬を医師や薬剤師と相談しながら根気強く決めていきましょう。

 

決して先生に申し訳ないから、とか、付き添いの人の労力を無駄にしたくないからと言った理由で嘘を言ってはいけません。ごまかして治療を続ける方が結果として治療に長く時間がかかる事になります。


また不安の種がはっきりとある場合にはその根本的解決に努めるようにしましょう。
もちろんこうして口に出すのは簡単ですが、実際に簡単に解決できないからこそ不安なのであって、こんな事を言われても困りますよね。

 

そういった場合にはカウンセラーの併用もオススメできます。

 

どうしても人は不安に襲われているときは視野が狭くなりがちで、不安の種で頭がいっぱいになっており普段は簡単に考えられることも考える余地が無くなってきている場合があります。

 

カウンセラーとの対話の中で認知行動療法などを行うことによってそもそもの自分の考え方のスタンスを変えていくことも不安を取り除く有効な手段となります。

 

「抗不安薬を使って良くない人」ということに関して強いて言うならば、お薬に頼りっきりでなぜ自分が抗不安薬を飲むことになっているのかという事に目を背けている場合は、抗不安薬の使用の善し悪しは別にして他にもやれることがあるのかもしれません

 

もちろん、心が疲れているときには一時的に考えずにゆっくり心と体を休めることも大事ですので、そのONとOFFの切り替えに関してもやはり医師やカウンセラーの指導の下行うことをオススメします。

 

ベンゾジアゼピン系抗不安薬まとめ

 

現在の治療の第一歩はSSRI、SNRI、NaSSaなどの分類の薬となっています。

 

これらの薬は副作用が多かったり、お薬同士が相互作用を起こしてしまったりすることも少なくありませんので、こういった場合にベンゾジアゼピン系抗不安薬を使用することもあります。

 

こういった昔からある抗不安薬の事をマイナートランキライザーと呼んでいます。マイナーとつきますが決してネガティブな意味ではなくただの分類です。

 

新しい薬と昔からある薬にはそれぞれ一長一短がありますので、それぞれの特徴を理解しながら、医療機関とよく相談して使用していきましょう。