【抗コレステロール薬まとめ】:コレステロールを下げるお薬の特徴とは?
こんにちは! Ph.塩です。
今回は「抗コレステロール薬」についてです。
この分野のお薬は世界で最も飲まれている薬であり、特に肥満大国アメリカで飲んでいない人の方が少ないほど使用されています。
それほど肥満に悩んでいる方が多いとも言えますが、アメリカの食事を考えるとまずは薬を飲む前にやることがあるのではとも思えますね笑
ですがあまりに高くなってきてしまったコレステロールの値は食事や生活環境の改善だけではすぐに治るものではありません。
時には薬の手助けを必要とする場面もあるでしょう。
今回はそんな多くの方が服用しているコレステロールのお薬について詳しく書いていこうと思います。
目次:
1.コレステロールってなに??
2.コレステロールの薬にはどんな薬があるの?
3.横紋筋融解症ってなに??
4.コレステロール薬まとめ
コレステロールとは物質の名前で、血管の成分だったり、他の物質ができる元だったりします。
コレステロールは一定数が血管の中を浮遊していて、血管自体の補修などにも役立っています。
コレステロールというと悪いイメージも多いと思いますが人間の体に必須の成分であり、これがないと人間は血管がぼろぼろになって死んでしまいます。
少なければ少ない方がいいだろうという考え方の方も多いと思いますが、実はこいつが少なすぎても血管が破れやすくなってそれはそれで命の危険性もあるんですよ。
ですからコレステロールは多すぎても少なすぎてもいけないんです。
何事もほどほどにということですね。
ところで、コレステロールにはどんな種類があるんでしょうか?
LDLコレステロール...
いわゆる悪玉コレステロールと言われるヤツです。こいつを下げることを目標にしている方も多いのでは?全身にコレステロールを運ぶ役割を持っていて、こいつが多いと自然と運ばれるコレステロールも多くなると言うわけです。
HDLコレステロール...
いわゆる善玉コレステロールと言われるヤツです。こいつは血中からコレステロールを回収してきてくれます。つまり全身からコレステロールを抜けさせてくれるということですね。
中性脂肪...
略して書くとTG(トリグリセライド)と言います。こいつも多すぎると良くないヤツですね。文字通り脂肪でして、過剰なカロリー、栄養価が脂肪として蓄えになってしまいます。
一昔前はTC(トータルコレステロール)と言って総コレステロール数が検査値の指標になってきました。
コレステロールが多いんだから、黄色信号なんじゃないの?という発想です。
ですが、コレステロールの中にも上記の様な良いやつ、悪いやつがいて、それぞれの役割があるという事がわかってきました。
そして現在ではLDLコレステロールが低くてもHDLコレステロールが低かったら良くないという考え方から「LH比」という比率が大事になってきています。
すなわち、LDLコレステロールの値をHDLコレステロールの値で割った物がLH比となります。
例えばLDLコレステロールが120、HDLコレステロールが80である方は120÷80で1.5になります。
1.5以下の場合...
血液のコレステロール値は適正で、綺麗な値であると言えるでしょう。
2.0以上の場合...
コレステロールを全身に運ぶコレステロールが多く、逆に回収するHDLコレステロールが追いついていない状況です。このままでは全身のコレステロールの量は増えていき、動脈硬化などのリスクが高まるかもしれません。
2.5以上の場合...
すでに血管の中に血栓ができはじめている可能性があります。血栓が胸で詰まれば心筋梗塞、脳で詰まれば脳梗塞、下肢で詰まれば下肢静脈瘤などの病気の引き金になります。急いで対処しましょう。
このようにコレステロール自体は昔から知られていましたが、それぞれの種類のコレステロールの血中濃度が人体にどういう意味をもたらすのかということは実は最近になってしっかりと認識され始めて来たんですね。
昔から言われているのはスタチン系、フィブラート系と呼ばれる薬剤です。
スタチン系は以下の種類がありますが、皆さんが飲んでいるお薬はございますか?
スタンダードスタチン
メバロチン(プラバスタチン)...
CYP代謝無し。水溶性。強くはないが相互作用が少なく使用しやすい。DMリスクを減少させる可能性。
リポバス(シンバスタチン).....
CYP3A4代謝。脂溶性。DMリスクを上昇させる可能性。
ローコール(フルバスタチン)...
CYP2C9代謝。脂溶性。値オーラルという薬と相互作用を起こしにくい。(他は注意が必要)
ストロングスタチン
リバロ(ピタバスタチン)...
CYP代謝ほぼ無し。脂溶性。DMリスクを上昇させる可能性があるがメバロチンに次いで少ないと言われる。ストロングスタチンの中で相互作用は少なく、2016/8現在唯一の子供に適応有り。
クレストール(ロスバスタチン)...
CYP代謝ほぼ無し。水溶性。DMリスクの上昇の可能性。酸化マグネシウムと併用で吸収率低下。最大量が多い(20mg)ので増量の可能性があるときは使用されやすい。
リピトール(アトルバスタチン)...
CYP3A4代謝。脂溶性。DMリスクを上昇させる可能性があり、唯一添付文書の副作用欄にDMの記載有り。
※CYPというのは肝臓の中の代謝酵素であり、このCYPの種類には3A4、2C9などの名前で多くの物が確認されています。ですから他の薬がCYP3A4を邪魔してしまう場合、リポバスやリピトールが代謝できなくなって効き過ぎてしまうこともあるかもしれません。このCYPという項目を確認することは薬の飲み合わせでとても大事になってきます。
※水溶性スタチンでは心血管に対する病気などの発現するリスクを抑える効果が脂溶性スタチンにくらべ優れているとの報告があったりもしますが、明確な答えも出ておらず、ばらばらの見解が出されています。
※実はスタチン系は全てDMリスクを上げると言われていますが、メバロチンだけは下げると言われています。ただしこれも明確な答えが出ていなくて、ばらばらの見解が出されています。
※横紋筋融解症(後述)はどの薬でおきやすいのかということはまだ答えが出ていません。
※近年ではスタンダードスタチン、ストロングスタチンという言い方もしなくなってきました。明確な使い分けも弱い、強いというよりも上記のような薬の特徴を考えてその人にあった薬剤を選択する時代になってきたと思います。
またフィブラート系のお薬は以下の通りです
ビノグラック(クロフィブラート)...
特定の高コレステロール血症によく効く。
リポクリン(クリノフィブラート)...
LDLを下げて、HDLを上げてくれる。
ベザトール、ベザリップ(ベザフィブラート)...
TG、LDLを下げてくれる。腎機能が下がっていたら使いにくい。
リピディル、トライコア(フェノフィブラート)....
TG、LDLを下げてくれる。肝機能と腎機能が下がっていたら使いにくい。尿酸排泄促進作用もある。
こちらも横紋筋融解症はどの薬でおきやすいのかという問いに答えは出ていません。
また最近出た薬で「レパーサ」という薬があります。
レパーサはコレステロールを取り込む肝臓の受容体を分解しないようにすることで血中コレステロールを下げるお薬です。
非常に薬価が高く、高額医療費の問題としてよくとりだたされていますね。
一定の効果は臨床試験から出されているので使用する価値はあるでしょうが、上記のスタチン系、フィブラート系の歴史を考えるとまだまだ信頼度の点では及ぶ物ではないため、まずは上記の薬剤を使用するのがスタンダードでしょう。
これはスタチン系、フィブラート系の薬剤に見られる副作用の一つで筋繊維が分解されてしまうというものです。
一言で説明すると「筋肉が溶けます」という言い方にでもなるかもしれません。
私がまだ新人薬剤師だった頃患者さんに「筋肉が溶ける可能性があるので何かおかしいなと思ったら教えてくださいね」と言って患者さんに飲みたくないと言われてしまった失敗談があります笑
筋肉が溶けるかもと言われて「ほうほう、そうですか」とはなかなか言えませんよね笑。
横紋筋とは、筋肉の一種で横紋のような模様の筋肉の事を言います。この筋肉は全身に分布していて、どの部分が影響を受けるかと言うことは明確に言うことはできません。
どんな症状もそうですが放置していると危険です。
最初は筋肉痛、体のだるさ、おしっこが褐色になる、などの症状が現れる事がありますのでそれらがある方はかかりつけの病院や薬局で相談してみましょう。
近頃では夏で脱水気味になるのでおしっこが褐色の人は多いかもしれませんが、気になるのなら一度相談してみてくださいね。
横紋筋融解症は薬に服用をやめたら治りますので早めの対処が必要なんです。
また、横紋筋融解症はお薬を飲み始めてから数ヶ月後に現れる事がほとんどです。
なかなか意識して観察していることも難しいと思いますが、この副作用を頭の片隅に置いておいて、症状が現れたらすぐに対処できるようにしておきましょう。
コレステロールが高い方にも原因は二つに分けられます。
遺伝的にコレステロールが高い方と、生活習慣が問題になってコレステロールが高くなっている方です。
遺伝的にコレステロールが高い方はなかなか対応が難しいかもしれませんが、上記の薬やレパーサなどを使ってコントロールしつつ、遺伝的にコレステロールが高くない方に比べて生活習慣を徹底的に見直す必要があります。
生活習慣が問題になってコレステロールが高い方は薬の使用の前にもちろん、まずは生活習慣を見直すところから始めましょう。
よくコレステロールが高めの食事が原因だと言われますが、それが一番大きな原因であることは確かです。
ですが他にも睡眠不足だったり、水分が足りていなかったり、偏った栄養バランスの食事をとっていることも実はコレステロールを高める原因になるんです。
ですからコレステロールが高めの油っぽい食事を控えるだけではなく、バランスよく食事をとって睡眠状態などの日々の生活を見直すようにしましょう☆