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【デパス】:その効き方と薬物乱用について

こんにちは! Ph.塩です!

 

今回は「デパス」についてです。

 

精神科領域で出されるお薬で、多くの人に使用されているとても良いお薬です。

 

ただ、多くの人に処方されている薬と言うことで乱用が問題になっているお薬にもなります。

 

今回はデパスというお薬についてと、なぜ薬物乱用につながっているのかというお話に迫りたいと思います。

 

・デパスってどういうお薬なの

 

向精神薬の区分の一つで、これを飲むと感覚的には

「ぼーっとする」、「すっと気持ちが楽になる」、「ふらつく」、「よく眠れるようになった。、「めまいがする、くらくらする」と言ったような評判を病院では患者さんから聞きます。

 

デパスの適応は以下の用になっております。

 

 ●神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
 ●うつ病における不安・緊張・睡眠障害
 ●心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
 ●統合失調症における睡眠障害
 ●下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張
  頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛

 

ここからもわかるように、デパスは以下の作用を持ち合わせています

 

 ○抗不安作用
 ○催眠作用
 ○筋弛緩作用

 

それぞれの作用は比較的に強く、また効果発現が速いため頓服的に使用されることがあります。

患者さんの状態に併せて頓服1錠で使用する事もあれば日中の不安感や抑うつ症状に対して朝昼晩と1錠ずつ飲む事もあります。


前述の様な患者さんの評判はこういった作用から来ているのですね。


またこの薬は医療用医薬品になりますので病院で処方をしてもらわないともらうことが出来ません


中には病院では海外から購入して持ち込んでくる患者さんもいらっしゃいますが、これは本当におすすめできません。服用を誤って倒れたり、中毒になってしまう可能性があります。

 

自分に合った量を自分に合ったタイミングで飲めるようにお医者さんや薬剤師と相談しながら飲むようにしましょう☆

 

・もっとマニアックにデパスってどういうお薬なの?

 

薬効成分はエチゾラムという薬剤になり、短時間型という作用時間の分類になり、作用は早めに効きます。

 

また区分としてはベンゾジアゼピン系薬剤という区分になり、中枢のベンゾジアゼピン結合部位という所にぴたっと結合する事によってClイオンを細胞内に流入させて、中枢の活動電位を下げます。

 

これにより神経を静めることができ、不安感が取れたり眠たくなったりするわけです。

 

またこのベンゾジアゼピン結合部位という部位の他にアルコール結合部位というものもあり、そこにアルコールは結合して同じように細胞内にClイオンを流入させる事が知られています。

 

ですからアルコールと一緒に服用するのは作用を増強させてしまう可能性があり、そのアルコールにより増強する程度や結果が計り知れないためデパスのような向精神薬とアルコールを同時に飲む事は辞めましょう、と言われています。


ところで、我々の肝臓にはCYPという酵素が多く潜んでおり、このデパスというお薬は肝臓のCYPという酵素の働きによって代謝されていきます。

 

そのCYPという酵素の中でもCYP2C9及びCYP3A4という種類の酵素によって代謝されるため、この酵素を邪魔したりするお薬と一緒に飲むとデパスが代謝されにくくなり、作用が増強してしまうという事もあります。

 

また逆にこのCYPという酵素を誘導する薬を一緒に飲むと今度は代謝が速すぎて効き目が落ちてしまったりすることもあります。

 

このお薬を使用するときは他に飲んでいる薬やサプリメントがある場合に医師、薬剤師に必ず相談してくださいね☆

 

・デパスはなんで乱用されやすいの??

 

「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」という国立精神・神経医療研究センターや東京大学などの研究者が、厚生労働省科学研究費補助金を受けて2014年に行った調査がありますが、その中での薬物乱用数ランキングは以下の用になっているようです。

 

1位 エチゾラム(デパス)
2位 フルニトラゼパム(ロヒプノール、サイレース)
3位 トリアゾラム(ハルシオン)
4位 ゾルピデム(マイスリー)
5位 バルビツール系薬剤


2位のフルニトラゼパムというお薬は「レイプドラッグ」と海外でささやかれるほど乱用されているようです。その名の通り酒や飲み物に混ぜて眠らせて性的な暴行を加えるという事ですね。

 

最近ではこのフルニトラゼパムの錠剤を真っ青に着色させて飲み物などに溶けた際に異常な色になるように工夫されている錠剤もあります。

 

私としてはブルーハワイ的な色に見えましたので青い酒を勧められたらこの対策が意味が無くなってしまうので要注意なのかな?とも思いました笑


こんなフルニトラゼパムを抑えてデパスが1位になってしまった原因はなぜでしょうか?


それは「長期処方が可能であるから」ということが大きいでしょう。


通常、向精神薬は乱用を防ぐことや病院に来て状態を見せてもらうために長期処方が出来ない法律があります。


例えば上記のフルニトラゼパムやトリアゾラムだと30日までしか処方は現在のところ出来ません。

お薬がなくなったらまた病院にいって先生に症状を見てもらって薬をもらうしかありませんね。

 

しかしデパスは向精神薬指定がされていないため処方制限がかかっていないお薬なのです。何ヶ月分でも、100日分でも処方が可能です。

 

そうすると先生にもらった薬を大量に余らせておいて売ったり、他人に譲ったりして乱用が起きやすいんですね。

 

こう言ったことがデパスを薬物乱用数ランキング1位にさせている原因の一つでしょう

 

追記:デパスは今秋、処方日数制限がかかります

これで乱用や横流しといった事例も減っていくでしょうか?

詳しくは以下の記事をご覧ください

 

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・最後に

 

デパスはとても良い薬です。ですが乱用すれば身を滅ぼし、命に関わるでしょう。

しかしこれはどんな薬にも言えます。向精神薬に限らず、どんな薬も使用を謝れば命に危険を及ぼすものです。

 

特にこのお薬を使用するときは医療従事者としっかり相談しながら自分の体調を見てもらいつつ使用していきましょうね☆