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【ベゲタミンの製造販売中止】:切り替え方法と今後の処方は?

こんにちは!Ph.塩です。

今回は「ベゲタミンの製造中止」についてです。

公益社団法人日本精神神経学会から「薬物乱用防止の観点からの販売中止」の要望があり、今年いっぱいで製造中止になるそうです。
その後はそれまでに製造されて流通しているもののみの取り扱いになります。

お薬は様々な事情で製造が中止になったり流通が変わったりしますが、このような向精神薬が製造されなくなると特にその代替薬が非常に大事になってきます。

このお薬のおかげで日常生活を平穏に送れている患者さんもいることでしょう。

今回はそのベゲタミンについてと、今後のオススメする方針について記載して行きたいと思います。

目次:
0.ベゲタミンってどういう薬?
1.ベゲタミン中止後はどのように薬を切り替えていけばいいのか?
2.最後に



0.ベゲタミンってどういう薬?


まずは、ベゲタミンとはどの様な薬なのかという事を書きます。ご存知の方はこの項は飛ばしていただいて結構です。

ベゲタミンとは、様々なところで言われていますが「飲む拘束衣」と呼ばれるほどに強力に催眠効果と鎮静効果を持つ向精神薬です。
また「赤玉」「白玉」との愛称で呼ばれている事もありますね。

• クロルプロマジン(商品名:コントミン)
• プロメタジン(商品名:ピレチア・ヒベルナ)
• フェノバルビタール(商品名:フェノバール)

上記の3種類の薬が混合して入っており、それぞれが相加、相乗的に力を合わせて効いてくれるお薬です。


クロルプロマジン:
第1世代抗精神病薬(定型型向精神薬)という分類の薬剤です。
もともと適応は統合失調症の治療薬であり、脳のドパミンのはたらきをブロックして統合失調症や躁病の症状を改善させます。(ドパミン受容体拮抗作用やD2遮断作用とも呼んでいます)

またヒスタミンのはたらきをブロックする作用(抗ヒスタミン作用、H1受容体遮断作用とも呼びます)も持ちます。


ヒスタミンは脳を覚醒させる物質であるため、ヒスタミンのブロックは眠気を生じます。


これによりコントミンは眠気も生じるお薬になります。このあたりは市販の抗ヒスタミン薬と似たものがありますね。

クロルプロマジンは統合失調症の治療薬として最初に開発された歴史の深いお薬で、このお薬が始まりとも言えます。


しかし新しいお薬がどんどん開発されて行くうちに、重篤な不整脈や悪性症候群といった危険な副作用が出現する可能性があることが指摘されはじめ、現在では一番最初に使うべきお薬とはされていません。他の新しいお薬が使用できない場合や効かない場合、患者さんが望んだ場合のみ使用されます。

プロメタジン:
プロメタジンは抗ヒスタミン薬というお薬になります。抗ヒスタミン作用が強く、眠りに導く力に優れます。
またクロルプロマジンの副作用である錐体外路症状(EPSとも呼びます)や吐き気を改善するはたらきがあり、
ベゲタミンの中でクロルプロマジンの副作用止めとしての役割もあります。

フェノバルビタール:
フェノバルビタールはバルビツール酸系という種類のお薬です。バルビツール酸系は催眠作用(眠りを導く作用)や抗けいれん作用に優れるため、不眠症やてんかんなどに用いられていたお薬です。


こちらも画期的な初期のお薬で、その強力な作用からこのお薬を手本として麻酔などに使うお薬の開発が進んで行きました。


ベンゾジアピン系向精神薬と近くの部位に結合して効果を発揮しますがベンゾジアゼピン系薬剤と比較して中毒域に達する危険性が高いお薬です。


そのためクロルプロマジンと同じようにこのお薬は新しいお薬にどんどん取って代わられていき、今では積極的に使用することはあまりありません

ベゲタミンは、この3つの成分から成っています。

 

この、3つの成分の持つ作用はベゲタミンが開発されて約60年近く経つ現代でも標的とされている作用であり、まさに拘束衣の名前のごとく「がんじがらめ」に鎮静する薬剤と言えるでしょう。

更にクロルプロマジンとフェノバルビタールはお互いを強め合う相互作用が知られており、ベゲタミンはそういった意味でも強く作用するお薬です。

ベゲタミンはこのような強い力を持った薬剤で、多剤服用になりがちな患者さんをこの1剤で救ってきました。
元々統合失調症を治療する薬剤でもあり、その強い鎮静作用から催眠効果を狙って使われるようにもなっています。

そんな背景を持つ薬が今危険性や安全性を考慮された上で、製造が中止にされようとしているのです。

1.ベゲタミン中止後はどのように内服を切り替えればいいのか??



いきなりお勧めできないやり方で恐縮ですが、最もこれまでと変わりなく薬物治療を続けられる方法を紹介します。

クロルプロマジン→コントミン
プロメタジン→ピレチア・ヒベルナ
フェノバルビタール→フェノバール

ベゲタミンの成分をそれぞれ上記のように各製品に切り替えてしまえばいいのです。

ベゲタミンAならば
コントミン25mg    
ピレチアorヒベルナ12.5mg    
フェノバルビタール40mg

ベゲタミンBならば
コントミン12.5mg    
ピレチアorヒベルナ12.5mg    
フェノバルビタール30mg

となります。

しかし、このやり方はそれぞれを各製品に置き換えただけなので公益社団法人日本精神神経学会からの「薬物乱用防止の観点からの販売中止」依頼を全く無視していることにご注意下さい。

今まで60年近く使用されているものの、ベゲタミンは確かに強力すぎる薬剤でもあり、薬物乱用が問題になっている薬剤でもあります。


ベゲタミンが終了してしまい困っている患者さんもいらっしゃいますが、安全性の問題点や乱用問題にも真剣に取り組まなければいけません。

このようにベゲタミンを「バラして」使用することは、製剤配合比を個人でいじって使用しやすくなる原因でもあり、患者さんの服薬遵守状況が非常に重要になります。


もし切り替えるならば患者さんのキャラクターと症状をしっかり把握し、薬の背景について十分にご理解いただいた上で切り替えて行くべきでしょう。


そして、出来ることならば最も強力に鎮静する力をもち、安全域と中毒域の差が小さいフェノバルビタールを徐々に減薬していけるといいと思います。


その他には、ドラール(クアゼパム)に切り替えるという方法もあります。
症例報告レベルで、大規模調査はありませんがベンザリンをドラールに切り替えてうまく行ったという例があるようです。


ドラールは長時間型ベンゾジアゼピン系向精神薬であり、ベンザリンとは違う形で効くお薬です。


しかし、ベンザリンを徐々にドラールに切り替えてうまく行くならば安全性の観点から素晴らしいことでしょう。


また統根本的な問題としてそもそもベゲタミンはその患者さんに必要なのかということも考えて行くべきでしょう。


特に睡眠に関しては以前記事にしましたベルソムラ、ロゼレムという新しいお薬もありますのでそちらを使用して見ることもいい手段だと思います。

 

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睡眠改善のためのガイドラインに関してもどんどん改訂がなされており昔の非常識は今の常識となっているところもありますので是非ともかかりつけのお医者さんと相談して行くことをお勧めします。

2.最後に


ベゲタミンは効果が強い点を咎められたのではなく、安全性、乱用の問題の観点から製造中止になっています。

したがって今まで服用していた患者さんが間違った治療をしていたというわけでは決してありません。

ですから今までベゲタミンを使用して治療をしていた患者さんにとっては正直いい迷惑といった感じが否めないでしょう。

これも時代の流れ、というにしてもなかなか納得できない部分もあると思います。

しかし製造中止はもはや変わりませんし、処方日数制限がありますのでたくさん処方してもらってとっておくこともできません。

まだ製造中止まで3ヶ月あるため、しっかり医師、薬剤師と相談して製造中止後の薬物処方に関して対策をとっておく必要がありそうです。

当院でも精神科や臨床心理士と協力しながらベゲタミン使用患者さんが不都合なく治療を継続できるように取り決めや対策を講じているところです。

 

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