【QT延長】こんなときどうします?
今回は「QT延長」についてです。
皆さん、QT延長に対してどれだけ気を払っていますか?
これほど痛い目にあったDrとそうでないDrで気の払い方が違う薬の副作用は無いかもしれません。
そもそも、QT延長って何がどうなるの?という方もいらっしゃるほどです。
とはいっても薬物相互作用によってQTc時間が延長する、というところまで行くと全ての薬剤を把握しておくのは薬剤師としても難しい問題ですよね。
さらにどんな既往があったらモニターをつけるべきなのか、添付文書の注意書きはどこまで対応するべきなのか、こういった事は非常に難しい問題です。
今日はそんなQT延長に焦点をあてて考えてみたいと思います
目次
1.こんな場合、どう考えますか?
2.せん妄時のセレネースってどうする?
セフトリアキソンとランソプラゾールの併用でQTc時間が500msec以上に延長する確率が1.4倍になることがわかったとの報告があります。
PUBMEDで読めます→J Am Coll Cardiol 68: 1756, 2016
これって、よくある組み合わせですよね?
この1.4倍ってどのように評価すればいいのでしょうか。
間違いなくQTcが500以上というのは異常値であり何らかの対応をするべきでしょう。
そう考えると1.4倍だろうとそれ以下であろうと薬物相互作用によるQT延長を指摘するのは間違っていないかもしれません。
でもこれが定義として異常値のカットオフとされている440を超えるかこないか推移している人に処方されていたら..?
臨床的な対応ってこういうところがとても難しいんですよね。
良く言われる言い方をすれば「有益性投与」となるでしょう。
「使ったほうがいいと思えば使えばいいし、使わない方が良いと思ったら使わないでいいよ」という事です。
僕はこの言い方が大嫌いです。リスクとか責任とか色々考えるとこう言いたくなる気持ちもわかりますけどね。何の解決にもなっていない。
僕の個人的な答えとしてはどこまでいっても個別対応なのだと思っています。
個別対応というのは、患者さんの年齢、既往、病歴など様々なものを鑑みて、Dr、Ns、その他スタッフと十分なコミュニケーションを取った上で答えを出すという意味です。
また総合病院ならば専門医に併診の依頼を出しても良いでしょう。
少なくともそうやって注意深く見ていれば、急変時に把握ができます。
結局僕の答えも「有益性投与」ですね笑
当たり前のことですが薬剤師はそういった薬物の副作用や相互作用を背景知識として持っているので、様々なスタッフとの橋渡しとして活躍できると良いですね。
セレネースは純粋なD2受容体遮断薬であり、添付文書にもTorsades de pointesを含む症状に注意!と重要な基本的注意に書いてあります。
こうしたD2受容体遮断作用を持つSDAなどの向精神薬にはすべてQT延長に注意するべきなのですが、セレネースはとことんD2受容体遮断に特化しているのでそのリスクも高いでしょう。
しかしセレネースは注射薬もあり、認知症のBPSDや活動性せん妄で暴れている人にはなかなかもってこいな薬なわけです。
そんな背景を踏まえて、ここで臨床的な問題があります。
「せん妄で暴れている患者さんにECGモニターをつけることが有益なのか?また、可能なのか?」
せん妄の背景には薬だけではなく手術、環境の変化、生活歴、認知症の有無など様々な条件が因子となり複雑に影響し合っています。
その中でも「ルートが増える」というのも一つの影響として言われており心電図モニターによるルート造設はせん妄に対して悪影響となるでしょう。
また点滴自己抜去もよく問題なりますが、せん妄状態であれば心電図モニターもブチブチ取ってしまう可能性があります。
アスピリンジレンマならず、セレネースジレンマとも言えるでしょうか。
セレネースを使うならルートが増えるし、でも経口摂取できなくて使わないと行けないし,,,,なんてこともあります。
個人的には元々QT/QTcがカットオフに近かったり既往があったりするハイリスク患者にはモニターをつけ、自己抜去など覚悟で行うべきだと思います。
副作用発症に関して添付文書に書いてある以上訴訟問題にも関係しますからね。
そうでなくてもリスクはしっかり担保した上で使うのが薬だと思います。
しかし、注射の向精神薬、睡眠導入剤はもっと増えてもいいと思うのになんでこんなに少ないんですかね~。
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