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【ベルソムラ】:新しい睡眠剤として注目!その特徴と効き方は・

こんにちは!Ph.塩です!
 
今回は「ベルソムラ」についてです。
 
以前、ベンゾジアゼピン系睡眠薬について記事を書きました。
今回はベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬で、ベルソムラという新しいお薬について紹介して行こうと思います。
 
目次:
1.ベルソムラってどういう薬?
2.ベルソムラの副作用は?
3.ベルソムラの使いどころは?
4.ベルソムラまとめ
 
 
ベルソムラってどういう薬?
 
一般名:スポレキサント
 
今までにない作用機序の薬剤でオレキシン受容体というスイッチを邪魔することで効果を出す新しい不眠症治療薬です。
 
15mg〜20mgの用量の幅で使用します。
 
このような作用を持つ睡眠薬はかつて無くベンゾジアゼピン系睡眠薬のように鎮静させて眠らせるというよりも脳の覚醒レベルを下げることによって眠らせてくれます。
 
効果は個人差がありますが早めに発現し、眠りにつくまでの時間も短縮してくれます。
 
また中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害に関しても効果をもたらすという報告があり、幅広い使い方が期待できそうです。
 
しかし強さとしては、ベンゾジアゼピン系のマイスリーやアモバンのような薬と比べると必ずしも強いとは言えないようです。
 
不眠以外の疾患がない方ではまずベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用して見てそれでも合わないならベルソムラを使用するという順番になるでしょう。
 
また食事によってベルソムラの体内での処理時間が影響を受けて効果の強さも変わってしまうので食事中、食直後の服薬は避けましょう。
 
 
ベルソムラの副作用は?
 
多くのベンゾジアゼピン系睡眠薬に見られるようなふらつき、記憶障害のような副作用は少なく、ベルソムラを中止した時の離脱症状や反跳性不眠などの症状も少ないと言われています。
 
ただし、一方でベルソムラを使用中に悪夢を見たり夜間にうなされてしまったといった報告もあります。
 
ベルソムラは世の中に売り出されてからまだまだ新しいお薬ですので使用実績が少なく成長段階の薬剤とも言えるでしょう。
 
このように副作用としてはベンゾジアゼピン系睡眠薬より全体的に少ない印象を持つ薬剤で新たな治療選択肢として期待されていますが、長期的なデータはあまりありません。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬と効き方が違うのでアルコールと同時摂取が可能にも見えますが、やはりベンゾジアゼピン系睡眠薬と同様の作用を持つアルコールとベルソムラの併用も危険なので避けた方がいいでしょう。
 
妊婦、授乳婦に対しても避けるようには明記されていませんが、なにせ新しい薬で長期的なデータが無いため、使った時のメリットとデメリットを医師、薬剤師とよく相談して使用するようにしましょう。
 
ベルソムラの使い所は??
 
基本的な特徴は上記になりますが、特徴的な使い所は他に2点あります。
 
一つはせん妄状態になっている患者さんに使用しやすいこと。
 
一つはアモバンやデパスに処方日数制限がかかった場合にその代替薬になり得るということです。
 
一つずつ説明させてください。
 
せん妄状態の患者さんに対して
 
せん妄とは、寝ぼけの強い状態のことを指し、場所や時間、名前などが1時的にわからなくなってしまう状態の事を指します。
 
手術や大きな環境の変化、薬剤などの数多くのものに影響を受けてせん妄状態になってしまうのですが、ベンゾジアゼピン系薬はせん妄状態の患者さんのその症状を悪化させてしまう可能性があるので使用しにくいのです。
 
これはベンゾジアゼピン系薬の抗コリン作用によりせん妄の興奮を後押ししてしまうことによります。
 
しかしベルソムラにはこの抗コリン作用がなく、せん妄状態の人が眠れない時に使用しやすいと言えます。
 
せん妄状態の患者さんに使用できる睡眠剤は限られていますので、選択肢がベルソムラによって増えたことは非常に治療として大きな福音でしょう。
 
アモバンやデパスに処方日数制限がかかった時の選択肢になる
 
この秋から処方日数制限のかかるこのデパスとアモバンは、睡眠薬として非常に多くの方が使っています。
 
睡眠薬だけもらうために病院に来る方もいますし、何度も来るのは面倒なので1度にできるだけ長く処方してもらいたいですよね。
 
デパスやアモバンに処方日数制限がかかった後もルネスタというアモバンに似たお薬にはまだ処方日数制限がかかるわけではないですが、これも時間の問題でしょう。
 
そうすると処方日数制限のない薬剤はかなり制限され、ベルソムラやロゼレムくらいになるかもしれません。
 
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はほとんど処方日数制限がかかっていますし、アモバン以外のマイスリーなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬も同じく処方日数制限がかかっています。
 
ですからここでベルソムラの登場となるかもしれないわけです。
 
しかし、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較して上記の通り必ずしも強いわけではないので、ベルソムラで睡眠が不十分だった場合、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を貰わないといけないかもしれません。
 
そういった場合にはおとなしく処方日数制限ごとに病院に足を運ぶようにしましょう。
ベルソムラまとめ
 
今後ベンゾジアゼピン系睡眠薬などの主流の睡眠薬の他の選択肢として大きく期待されている新しい薬ですが、長期的なデータが無いのが現状です。
 
睡眠薬は特にいきなり薬剤変更をすると気持ち的にも切り替えが難しいお薬ですので、変更する時にはよく相談して対応を万全にしてから行いましょう。