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【人工知能】:ペッパー君は薬剤師になれるのか?

こんにちは!Ph.塩です。


「ペッパー君は薬剤師になれるか?」

 

ペッパー君って不気味と可愛いの間のような顔をしていますね。映画「オートマタ」に出てきそう。

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この子は10歳くらいの男の子のようなサイズに人工知能を積んだロボットです。

ソフトバンクが2015年2月から19万8000円で販売しているそうです。

 

人間の表情や声の調子を分析して感情を読み取る「感情エンジン」という人工知能も搭載し、他人に対してどのような言動をとればいいか自分で考えるように作られています。

 

学習機能もあるのでふれ合いを重ねるたびに相手への理解が深まっていきます。

 

他にもクラウドに接続して、他のペッパーの情報を取り入れて学習を加速させることや知識の共有が出来るそうですね


これはナルトの影分身を思い出しました笑

 

さて、一方で世間では人工知能などのデジタル技術が加速度的に進んでいる事で10~20年後には多くの職業が消えていくという話題があるそうですね。


これは2014年にオックスフォード大学の研究者が発表した論文が元ネタとなっています。


ちなみにその中には薬剤師が含まれておらず、そればかりか少子高齢化の社会の中では薬剤師の必要性は今後増大していくという識者もいらっしゃるそうで、そう言っていただけるのはありがたいことですね。

 

しかし、薬剤師の立場で言うのも何ですが、私はそうは思いません。

 

今後技術の進化は人間の予想を遙かに超えて進んでいき、薬剤師の業務もある程度肩代わりすると思います。

 

今日はそんな社会的な側面をペッパー君で考えていきたいと思います。

 

さて、ペッパー君は薬剤師となり窓口で服薬指導が行えるのでしょうか??

 

目次:

1.ペッパー君に搭載するシステムのはなし

2.人工知能にまつわる倫理の話

3.ペッパー君、選ばないと言うことを選ぶ

 

1.ペッパー君に搭載するシステムのはなし

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さて先日大阪で「第一回関西イスラエルTV会議セミナー」という学会が開かれました。
ここではイスラエルの医療関連ベンチャー企業10社が現地から自社製品のプレゼンテーションを行ったそうです。

 

日本側としてはビジネスチャンスを探している企業や投資ファンドの関係者が参加したそうですが、ここに処方箋チェックや服薬指導と言った薬局業務に関連するシステムのプレゼンがありました。

 

Telesofia社という会社は処方時の患者指導用の動画を患者情報に基づいて自動生成して配信するシステムを作っています。


なんといっても特徴は患者の年齢や性別、疾患、特定の医療上の指示や処方薬剤と言ったような患者一人一人異なる臨床的な情報に基づいた動画がリアルタイムで自動生成され患者はそれを視聴するというシステムです。

 

患者さんは医療機関や薬局でそれを視聴することももちろんできますが、帰宅して自宅のPCやタブレットでゆっくりそれを確認することも出来ます。動画で指示をしますので自己注射や吸入指導なんかにもしっかり対応できそうですね。

 

またMedAware社という会社は電子カルテのデータからデータベースを構築して処方箋の監査システムを作っています。


医療者側の誤認やエラーを通常操作とのギャップとして認識してアラーム通告するというシステムです。


ただし実臨床では登録情報ばかりを使用して治療や投薬に当たるわけではないのでアラームが頻回に鳴るようだったら医療者側もルーチンでアラームを無視するようになるかもしれませんね。

 

しかしこの問題も解決されています。日々の診療の中で発生する膨大なデータから今回の処方の内容がそこから大きくかけ離れていないかという事を検証し、問題の大きさに応じてアラームの種類を変えるシステムを開発したそうです。

 

もちろん学習機能もあり、そのアラートの後の対応も学習していくので同様のケースが頻発すればそれに対する対応もより「人間の判断」に似通ってくるのだそうです。

 

このような窓口業務だけではなく注射セットの取りそろえなんかももはやアンプルピッカーが導入されて久しいですし、抗がん剤の調整も調整者の被爆を考慮してロボット混注システムを導入している病院も出てきています。

 

このように現在でももはや薬剤師の業務の一部はロボットが肩代わりしている時代でもあるのです。

 

2.人工知能についてまわる倫理の話

 

ちょっと薬剤師の話から逸れるかもしれませんが、トロッコ問題という倫理的な問題をご存じですか?

 

非常におもしろい話ですので、ちょっとだけお付き合いください。以下の様なお話です。


線路を走っているトロッコが制御不能になってしまった!このままでは、進行方向の先で作業中の5人がトロッコに轢き殺されてしまう…


しかし運良くあなたは、線路の進路を切り替えるレバーの近くにいる。トロッコの進路を切り替えれば5人は助かるが、切り替えた先にも1人の作業員がいる。


5人を助けるためにレバーを切り替える?それとも知らなかった、見なかった、間に合わなかったとしてそのままにしておく?

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さて、あなたはどっちの道を選びますか??


この問題に答えは無いですが統計的な答えや、その他類似問題が多くありますので興味がある方はウィキペディアなどで調べてみてください。

 

これは一見なんの話なのかわかりにくいですが、人工知能に関する倫理の問題に繋がっています。

 

つまり、レバーを扱える立場が人工知能だったら?という話に置き換えて、その場合の人工知能に対する命令と、人工知能が行った行為に対する法的な規定を考える良い問題なのです。

 

薬剤師はこのような人の生死を今すぐに決めるような決断に迫られることも少ないでしょうが、「Aを選ぶとBを捨てる事になる」というのは膨大なデータを解析してもいずれ出てくる問題じゃないかと思います。

 

「この病気の治療にこの薬を使ったら良くなるけど別の疾患の懸念もある。しかし使わないといけない」といったように。

 

また患者の経済状況なども考慮して薬を選択することも必要かもしれません。家族に意志決定能力が無い場合はどうするのでしょうか?

 

悩ましいですね。究極の選択です。


そういった倫理的な問題点や、人間ならではの感情の機微はなかなかペッパー君では理解できないのではないかと思います。

 

そうなると、ペッパー君のとる行動はどうなるでしょうか?

 

3.ペッパー君、選ばないと言うことを選ぶ

 

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どうしても人工知能というと全自動で薬を実際に口に運ぶところまで全てやってくれる様な気がしますが、そこに至るまでには様々な選択肢を選び、様々な可能性を考えて薬は処方されていなければなりません。

 

上記の事を考えるとどうしてもペッパー君は「AとBの可能性がありますがどうしますか?」とまでしか言えないような気がします。


つまり、責任の担保が出来ないと言うことです。

 

全てを任せると言うことは責任も全て背負うと言うことであり、どうしてもペッパー君が機械である限りプログラミングでは細部までのいろんな条件や状況に対応できないところも多いと思います。

 

そういったところのすりあわせはやはりいつまでも人間が背負うのではないでしょうか。

 

そう考えると実際にお薬を渡したり、薬を作ったりするマンパワー的なところはペッパー君が担い、患者さんとの直接的なコミュニケーションや服薬指導などの臨機応変が求められる業務は人間が担っていくという分業制が今後考えられると思います。

 

ということでペッパー君が導入されたとしても答えのある問題まで担当し、答えがない事の選択は医師・薬剤師に問い合わせてくださいといったように「選ばないことを選ぶ」という結末になるのではないでしょうか??


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